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徒然草子G

〜 私的『痔』日記 〜

入院生活1


98年5月2日(土)のこと

6:00 検温・血圧測定
看護婦さんに窓を開けてもらい空を見る。なんともすがすがしいいい天気であった。今日が結婚記念日であることを思い出す。
「もう歩けますよ。気を付けてゆっくり歩いて下さいね。」と言われ、ベッドからごろりと転がりながら立ってみる。「あぁ、立てる。立てる。」オシリも多少痛いのだが顔をしかめるほどではない。ガーゼか何かを栓されてるのが気になるというか鈍痛を感じる程度。そろりそろりと歩いてみる。平気、平気、全然平気。
トイレに行き、おしっこにトライするが結局出ず。もう少しなんだけどなぁ。しかし、腹減ったなぁ。

7:30 回復室もひきはらい病室に戻る。階段もゆっくりとであるが昇れる。相変わらずオシリに異物感はあるもののあまり痛さを感じない。着替え洗面をすませトイレに。ちょろちょろちょろちょろとおしっこがでる。何か変な感触である。おまけに止まらないというか切れない。ピッピッとうまくチカラが入らないのである。「ふぅ〜っ」と長い息をし、しまう。すると少しだけじわっ〜と滲むようにもれ出た(笑)
みんながにこやかに声をかけてくれる。

8:00 朝食。
んまぃッ! ご飯、味噌汁、金時豆だけであるが美味い。旅館で楽しい酒をくらって朝風呂に入りさっぱりした後に食べる少し濃いめの朝食のごとく美味かった。

8:30 オシリの栓を抜き座薬を入れられる。抜く時と入れる時は一瞬激痛がオシリから脳天へ抜ける。チラリと見ると血まみれの栓(ガーゼか脱脂綿なのかはたまた生理用品みたいなものかわからないが)と、これまた血のいっぱい滲んだオシリにひいていた綿があった。なんだか、少し痛くなってきた気がした。

9:00 点滴。
これで今日のお仕事終わり。あとは食事と2時間毎のオシリ洗浄とカット綿替えだけ。あとはできるだけ安静にしておくことと、一大イベントである排泄!

10:00 妻、母面会に来る。
予想に反して元気そうなので驚いていたようである。「これなら章クン連れて来ても大丈夫だね」って(うんうん言ってるようだとやめようと思ってたらしい)約20分位いて帰る。無性に甘いものが食べたくなり頼んで買ってきてもらったチョコボールが美味かった。

11:00 オシリの洗浄
初のオシリ洗浄である。パンツをずらし、オシリにはさんだ形になってるカット綿を取る。まだ縫い糸(2週間くらいで自然に溶けるらしい、従って抜糸はない)も出てるとかでそろりと行う。「ゲッ! 血じゃ。血がいっぱい着いとるじゃん。やっべぇ〜」と、ドキドキしながら、ゆっくり極めて慎重に便座に腰掛ける。
「ふぅぅぅ〜」一動作一動作毎に長息がもれる。
ウォシュレットの水量を最小にし(ここで水量を間違うとたいへんなことになるので注意!)スイッチオン。ゆるやかに温水があたる。「ひぃッ!」背筋が伸びる。
ピリピリしたり、中の方も痛かったりするが、少しずつ痛みはやわらかなものになる。でも痛い、結構痛い。オシリを少しずつずらしお湯をかける、その都度「う〜ッ」とか「ひ!」とか「お〜し、おしおしッ」やら「しゅ〜」という無声音の掛け声ともつかないうめき声(?)を発する。
正直痛くて(寝ころんでる時はそれほど感じなかったのであるが)頭をトイレの扉に押しつけた格好である。手に汗にぎってるのがわかる。そして、再びゆっくりと腰を浮かすように立ち上がりトレットペーパーで拭く。拭くのではなくて水分を吸い取る程度にあてる位。肛門周辺は怖くて痛くてあてることもできなかった。新しいカット綿をソロリとはさみ、パンツを上げる。
血がついてたら流さず看護婦を呼ぶよう言われていたので、血の着いたカット綿を持ったままナースコール。トイレを見て「あら、ついてないじゃないの。流しちゃった?」と聞かれ、「いや、これ」と血の付いたカット綿を差し出す。「あぁ、これなら大丈夫。流れ出たり、便器につくくらいだたっら読んで下さいネ。」と言われた。後で聞くと、術後当分カット綿につくのは当然でごく普通のことなのであった。

12:00 少し居眠りをしているうちに昼食。
食欲もありパクパク食べてしまう。同室のKさんは、あまり食べると排泄の時怖そうだから食べれなかったと言う。まぁ、でも腹減ってるもんだからおかまいなく食べた。やはり、ずきずきと痛い。痛み止めを飲む。
できるだけ軟便にするため牛乳やヨーグルトは積極的に飲んだ。これはGman仲間のアドバイスもあったし、看護婦も指導してくれた。果物類をはじめ繊維質もよい。初日は牛乳4パック、ヨーグルト2パック、グレープフルーツジュース1パック、お茶3杯位?、みかん(小)2個、バナナ1本。と、これは少々やりすぎたか(笑)

14:00 オナラが出る。
うっ、やばい。と思いトイレに駆け込み便座に腰掛けると「ぷすぅ〜ん」と出た。一瞬「ひぃ」とびっくんこする。痛い。続けて数発(笑)ひくひくしながら出る。傷口がピシっときれたらどうしよう、いやだ、それはいやだと恐る恐るするのである。オナラでさえ怖かった。
この後は、よくオナラが出た(当分怖いのは変わらなかったが)。みんなも、よくする。患者同士の間では日常茶飯事のことで、恥ずかしさはあまりなく、ご婦人方もそれなりのおくゆかしさはあるもののプスプスされている。

15:00 章太郎面会に来る。
「おぉ〜っす!」と元気良く病室に入ってくる。「もう、ちぃ(痔のこと)切ったん? もう、いとぉないん? もう、治ったん?」と矢継ぎばやに聞いてくる。20分ほど(だけ)ベッドの上で遊んで帰る。
帰り際に、チョット耳貸してと言われてそばによると「早くよくなってね。遊んだげるけぇ。」と言って帰っていった。

16:30 夕食。
早かろうが、献立がなんであろうが、味がどうであろうが、出されたものは残さずいただく。モチ立ったままである。相変わらずズキズキと痛いし、動いてもないし、時間も早いのであるが腹は減る。
毎食事後、みんな歯を磨くのでマネして私も歯を磨く。

18:00 院長回診。
院長回診って言っても先生は一人しかいないし、夜勤の看護婦がひとりついてくるだけである。TVドラマのように婦長以下ゾロゾロ颯爽と列を組んで来るわけではなかった。
「いかがですか?」と聞かれるだけで特に異常がなければそれだけである。皇室の園遊会のようであった。「えっ、あれだけ? あらら、行っちゃった。」って感じである。
やはり痛みがあるので痛み止めを飲む。

少しうとうとしてたようだった。いつの間にか夕闇が迫っていた。
お腹が少し張ってきた感じ。「うぅ。」来たのかな?と、思いながら勇気を出してトイレに行く。しかし出そうにない。オシリを洗浄する。相変わらず、ピリピリして痛い。あぁ、ホントに出るときは怖いなぁ。硬いのが出たらどうしよう。下痢以外に柔らかいウンコしたことあまりないからなぁ。

時間がたつにつれ腹の張りがだんだん強くなってくる。消灯(9時)前にみんなで出前をとって食べていたがパスさせてもらった。しかし、人が食べているのを見ていると食べたくなってくるのは人情。下剤と痛み止めを牛乳で飲む。しかし、お腹空いたなぁ、腹張って痛いなぁ。と、土曜ワイド劇場かなにかをぼぉ〜っと見ながら寝ころんでいた。いつの間にか眠っていたみたい。

1:00 目が覚める。
みんな小さないびきをかきながら寝静まっている。
「おぉ、来た、来た、来た。」とソロリとベッドから起き出しトイレに行く。なんだか、蒸し暑い。腹はすごく張っている。ソロリと便座に腰掛けるが、出そうで出ない。体全体が汗ばんでくる。小刻みに震えながら排便を待つが出ない。「うぅ、腹痛てぇ、オシリ痛てぇ。」ウォシュレットを緩くあてて刺激してみるがダメ。オシリもかなり痛い。強く踏ん張ったり力んだりは絶対できない。「くっそぉぉ!(ハアハア)」っとフラフラしながらトイレを出る。
トイレからやっと出たと思ったら、今度は吐き気。「うぅ、ダメ。吐きそう。」と再びトイレに。便座に這いつくばるくらい辛かったが、結局何も出ず。得意の肩幅開き指2本突っ込み胃押上を行うが出ない。肩で息し、腹は波うっている。「も、もう、看護婦さん呼ぼう。」と思った瞬間。「あっ、今度こそ来た。」とパンツをずらし便座に腰掛ける。

んんん、はあはあ、ぅんんん、ひぃ、あぁ、ふぅぅ、んんんんん、と直腸の先っぽのあたりで非常な痛みと恐怖感との戦い。アブラ汗が出てきて、寝巻を脱ぎ捨てる。頭は前の扉に押しつけ、左手で下腹部のあたりをさすり、右手はぐぅで(握りしめて)便座を押しつけていた。
「ふんっむ、ううううぅ。」一息、そして「うぉおおおおぉぉ、おうっふっ!」にゅるにゅると体内から体外に向けてひとすじの物体が出る。「ひゅぃぇぇぇ〜、痛てぇぇぇ。」と言いながらも「お〜し、おしおしッ、はぁはぁはぁ」。さらにもうひとすじ。

終わった、ついに終わった。痛さと歓び(?)の涙がにじむ。ピリピリする患部にお湯をあてながら、生まれて初めて体験するような感覚を思い出す。なんともマユネーズが絞り出されたような感覚であった。少しずつ痛みが緩やかになりトイレを後にする。いつの間にか吐き気は止まっていた。
ペンギン歩きで病室まで戻り、「ふぅっ」とうつ伏せに倒れ込むようにベッドに身を預ける。あれれ、この感覚は何? って、残糞感が全くない。すっきりしているのである。いやぁ、これは快適、快適。正常な人はこれが普通なんだろうけど、極端に言えば生まれて初めて感じる便後の心地よさである。それに、ヒリヒリとした患部の痛みはあるもの『痔』の痛みは全くと言っていいほどない。

うれしい。

なかなか寝つけなかった。オシリの痛みは薄らいだものの、腹は相変わらず張っている感じ。手をこすり暖めてから自分のお腹をさすってみた(子供のころおばあちゃんに教わった腹痛対処法。これが「手当て」なんだと教わった)が、効果ほとんどなし。ひょっとして、腹減り過ぎて痛いのかなとチョコレートとカフェオレ(甘いものが飲みたかった)を飲んでみる。少し落ち着いたのかいつの間にか眠っていた。4時過ぎくらいと思われる。


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